- 登場人物は『3人以内』
- 1ツイート内で台詞とト書きを執筆し相手に渡す
- 1ツイートの制限時間は『5分程度』
- 相手への返信の形で続きを執筆する
- 末尾に『#交換戯曲』と入れる
- 合計『20ツイート』で終了
- 作:石井テル子(Micro To Macro)、上田ダイゴ(マーベリックコア/MoreGoofy’s)、西尾武(妄烈キネマレコード)、初瀬川幸次郎
- 執筆日:2021年7月26日
- タイトル:基礎化粧が大事(とき様より提供)
- 場所:高校の体育館の倉庫(高瀬和彦(ババロワーズ)様より提供)
- 時間:地球が滅亡するまでの時間(サカイリユリカ様より提供)
黄昏時。
太陽がキラキラしている。
女「ああ、私はこの時間帯が大好きだ。魂までが煌めいてくるよね。高校生活ももうすぐ終わる。もし今日これが上手く行けば、高校卒業しても私の人生ずっとずっと上手くいく気がする。ハア、来てるかな彼……」
体育館の倉庫の扉に手をかける女
女「あれ?」
女が扉を開けると、緑色の人間が立っている。
緑人間「ん?」
女「なんだお前」
緑人間「なんだとはなんだ」
女「ちょっと今から彼と煌めくんだけど。邪魔。出てって」
緑人間「煌めくのは別にいいけど、もうすぐ地球爆発するよ」
女「分かってるわよ」
緑人間「分かってんのかよ。だったら煌めいてる場合じゃねだろ?」
女「あんたねえ、地球規模の危機に普通のjKがなに出来るってのよ?」
緑人間「普通?」
女「どうせあと数時間の命なんだから煌めくくらいさせなさいよ」
緑人間「お前、鏡見てみ?」
女「え?」
緑人間、鏡状の膜を張る。
女「ちょ、え、なにこれ、なにこの緑のシミ!」
緑人間「お前も選ばれたということだよ」
女「違う違う、これはあの、そう、苔よ! きっと苔がついたのよ」
緑人間「どうしてここに来た」
女「え?」
緑人間「あと数時間だ、どうしてこの場所に来た」
女「え、それは、あれよ。彼に告ってオッケーを貰って2人で残りの高校生活を煌めく為に決まってるじゃないよのゲロ!」
緑人間「フッ。馬鹿だなお前」
女「なによクソ緑野郎!あ、あれ。シミが全身に広がっていくゲロ。あれれ、ゲロゲロ、ゲロ……」
緑人間「お前も選ばれたって言っただろ」
女「なんであと数時間しかないつってんのにこんな目に遭わないといけないのよゲロ」
緑人間「それはね、君ら人類が緑っぽいものを軽視してきたからだよ」
女「緑っぽいものって例えばなにゲロよ」
緑人間「君の場合はね、蛙だよ」
女「お願い、お願いだから彼と煌めく間だけでもなんとか」
緑人間「お前、自分の事ばっかりだな。少しは地球規模で考えられないのか?」
女「ケロ?」
緑人間「言っただろう。お前は選ばれたと」
女「どういう事ケロ?」
緑人間「地球を救いたくないのか?」
女「それより私は煌めき……」
緑人間「地球を救えば煌めき放題でしょうに!」
女「!」
女「っていうか、彼はどこ!?」
緑人間「?」
女「『?』じゃなくて、彼、田中くんはどこケロ」
緑人間「……さあ」
女「待ち合わせしてるケロロ。ここで会おうって。嘘!? 来てないなんてそんなこと……」
緑人間「可哀そうにな」
女「なにが、なにが可哀そうよ」
緑人間「地球を救おう」
女「私がそんなデカいこと出来るわけねえだろケロ!」
緑人間「てかお前、色だけじゃなくて顔面ぶつぶつボコボコだぜ」
女「へっ、うそ」
女が顔面を摩るとエライ凹凸が吹き出している。
女「ゲロゲロー! き、基礎化粧を、あれだけ保湿と美白に拘り続けた私のお肌がなんじゃこりゃゲロー!」
突然扉が開き彼が現れる。
彼「な、なんだお前ら!」
女「うわ」
顔を伏せる女。
緑人間「あ。こいつが例の?」
女「しっ」
緑人間「こいつが君に会いたいって言ってるよ」
彼「え、そんな緑っぽいの知らないけど」
女「あ。ワタシアナタシラナイデス」
緑人間「こいつと煌めくんじゃないのか?」
女「こんな姿じゃ無理じゃん!」
緑人間「だよな。だったらアレするしかないだろ」
女「地球を救う?」
緑人間「そうだ」
女「いやよ」
緑人間「やるんだ」
女「やなこった」
緑人間「救ったら元に戻れるぞ」
女「それを先に言いなさいよ」
彼「あの。つかぬ事をお聞きしますが、女の子見てませんか?」
緑人間「帰ったよ」
彼・女「え?」
緑人間「地球滅亡まであと数時間だ。残りの時間、せいぜい悔いのないよう過ごすんだな」
彼「あ、いや、僕は彼女に用があるんだ」
緑人間「だから、帰ったよ、なあ?」
女「あ、あ、はい」
彼「そうなんすか、残念。僕彼女に伝えたいことがあったのに」
女「え、な何?」
彼「うわ。びっくり!なんか君凄え緑だね」
女「あ! ああはいもう緑にかけては基礎の基礎から叩きあげてますから、へい。でもあまり見ないでくだせえケロ」
その時、突如大きな地響きが聞こえてくる。
彼「彼女どこに行ったか分かりますか」
女「で、彼女に何を言いたかったの」
彼「なんでお前に」
女「いいから教えてよう。教えてくれたら彼女に行き先教えるから」
彼「ただ一言好きだって」
女「ほんと?」
彼「ほんとだよ」
女「こんなだけど大丈夫?」
彼「ぎゃあああああ!」
彼、失神。
緑人間「良かったなあ煌めけて」
女「どこがよ! でも彼も私の事を好きならこうしちゃいられない! 意地でも地球救って元の姿戻ってやる!」
緑人間「お、突然のやる気」
女「早く教えなさいよ!」
緑人間「何を?」
女「地球を救う方法に決まってるでしょ!」
緑人間「……ん?」
女「あるんでしょ、地球を救う方法!」
ドゴーン!と空から轟音が鳴り響く。
緑人間「始まったようだ」
女「なにが」
緑人間「隕石がぶつかりあい、砕け散った何万もの礫が降ってくるぞ」
女「で!あれをどうしたら!!」
緑人間「お前には自分の手と足があるだろ」
女「え、あ、え!?」
鳴り響く轟音と共にバラバラと礫が降ってくる。
女「あ〜れ〜!」
緑人間「伸ばせ、伸ばせよう!お前の手足をよう!」
女「うーん。エイヤ!」
伸びる女の手足。するとその皮が裂け中から発光する程の白い肌が現れる。剥けた緑の皮は槍の様に尖りながら礫目掛けて勢いよく飛び出した。
女「伸びろわたしの緑。地球を救うんだ。この体育倉庫で彼といちゃいちゃするわたしの夢を誰にも壊させはしない!」
緑の皮が空から降る礫を回収し、どんどん美白になっていく女。
緑人間「そう。それでいいのだ。もうお前に教えることはない!」
活躍する女を横目に去っていく緑人間。
女「オラオラオラ〜ッ!これでッ!終わりだッ!」
女の正拳突き。
爆発音。
暗転。
静寂。
小鳥の囀り。
曇り空から差し込む光。
瓦礫の中から立ち上がる女。
女「やった、やったよ……」
振り返るが誰もいない。
女「あれ?緑の奴は……ん?」
足元にあった非常口のプレートを拾う。
女「これ……」
女「……」
非常口のプレートを元の場所に戻す。
女「さ、煌めき煌めき。私の煌めき。」
以前よりもどこか美しくなった女、うきうきで彼を迎えに行く。
誰もいなくなったはずの体育館の倉庫。
暗がりから、彼女の背中をじっと見つめる人影。
体育館倉庫の扉がガシャンと閉まる。
幕